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【02ROMA留学エッセイ2010-01b】 イタリア・ローマの正月とクリスマス
 BLOG開始以前より書きためていた、イタリア留学エッセイの更新第二回目です。 今回は、前々からぼちぼち話していたクリスマスと正月のお話の総決算。読まれる方にも、欧米と日本の生活文化のちがい等が学べることができるよう推敲を重ねていきます。それでは、下記よりどうぞ~!
 ちなみに、初回の引越し話はコチラ。番外編のイタリアトイレ事情話はコチラより、リンクを飛んで楽しんでいただければ幸いです。

 また、拍手やコメントありがとうございます。コメントは後日ご返信いたします! これからもお気軽に声かけてくださるとうれしいです。私自身が活気づきます(笑)。

【02ROMA留学エッセイ2010-01b】 イタリア・ローマの正月とクリスマス_b0206901_237278.jpg



 ローマの冬は寒い。といっても、まだ東京の寒さに似ている。冬は雨季にあたり石畳のせいもあって寒気が逃げにくいから、寒いようにも感じるが、太陽があれば別だ。日差しの強さは、薄着になっても暑いくらいで比較的過ごしやすいといえるだろう。しかし、雨が多い季節であることも確かだ。

 正月過ぎの寒い路地を、私はうろうろと歩きまわっていた。探しているものがあった。そして、それはローマのいたるところに散らばっていた。大家であるマリナに教えてもらった、イタリアのこの時期にしかない風物詩探しである。

 日本では、新年にまたがる正月に休暇をすえるのが一般的である。一方、キリスト教文化の根強い欧州では、正月よりもクリスマスのほうが重要だ。なんせ、公的なキリスト生誕の日である。ヴァチカン市国がおかれるイタリアでは当然のごとく、クリスマス前後は大方の企業が休みにはいり、街は静まり返る。スーパーなどのチェーン店も閉まっているのが普通となるが、その分正月明けは早い。元旦の翌日からどの企業も通常営業となる。

 とはいえ、イタリアの完全な正月明け……というよりクリスマス明けは、一月六日からだ。その前後にバーゲンが開催され、クリスマスや正月に欠かせないパンドーロやパネットーネといったパウンドケーキやさまざまなお菓子の在庫叩き売りをはじめる。各家庭には、大方片づかないそれらの未開封箱が積まれているのである。

 さて、イタリアのクリスマスの正式名称は「ナターレ」という。少しかわいらしい響きだ。ナターレのある十二月になると、街のイルミネーションはナターレ仕様に移り変わり、華やかな印象に生まれ変わる。イタリアは夏が乾季で冬が雨季なのだから、湿っぽく暗い夜を暖かなものしてくれるわけだ。

 ちなみに、このイルミネーションは各街の行政が行なっているものである。着飾り方が華やかであるか、華やかでないかで今年の街の財政状況がわかるという話を聞いた。イルミネーションの点灯時期も早かったり、ナターレのギリギリまで設置されなかったりとムラがあるわけだが、これもその年の財政状況が関係しているのかもしれない。

 そして、この時期により欠かせないのが、各教会に飾られるプレゼーピオ(もしくはプレゼーペ)と呼ばれるモチーフだ。イエス・キリスト降誕の一場面を人形劇のように模型で表現し、飾っているものである。聖母マリアと生まれたての赤ん坊、東方三賢者がうまやなどの中におさまっている。新約聖書を少しでもかじっていればわかる、とても有名なシーンのひとつだ。

 私は、このプレゼーピオめぐりを二週間前からはじめていた。どの教会も、この飾りものにひとつとして同じものはない。すべて紙製でつくられているものもあれば、市販のものを上手に組み合わせたもの、誕生シーンだけでなく、他に町の様子と市民の生活も付け加えているもの、電球などを要して誕生の瞬間をより輝かしく見せているものなど、本当にさまざまだ。大きさも小さなテーブルにおさまるものから、三畳以上の空間を要しているものまである。総本山のヴァチカン市国のものは、人形一体が生身の人間と同サイズくらいある巨大なもので、広場の中心に設置されていた。おそらく、あのプレゼーピオがローマ周辺で一番大がかりなものなのだろう。

 十二月から一月初旬までの教会めぐりは本当に楽しい。いつもはなかなか入るのにためらう名もない小さな教会でも、プレゼーピオめぐりとなれば気軽にはいることができる。何より自分のお気に入りのプレゼーピオを探すのが楽しいのだ。昔小物の家具などを揃えた人形遊びが好きだった人は、ハマってしまうに違いないのがプレゼーピオめぐりなのである。

 このプレゼーピオの習慣はとても有名なものでもあり、教会に設置されているだけでなく、家庭に飾る置物として売られているものもよく目にする。ナターレの時期に飾る家庭も少なくないのである。宗教が関わるので、こんな言い方はよくないかもしれないが、日本でいえば正月時にあわせて飾る品々と雰囲気はよく似ている。

 とはいえ、独自のセンスでこの人形劇をつくる場合は、材料の購入が必要になる。材料集めをする場合、手っとり早いのが、ローマだとナヴォーナ広場でナターレ前に開催される、文字通りのナターレ市だ。

 ナターレに必要なお菓子や、子どもへのプレゼントを売る仮設店舗の中に、プレゼーピオづくりに関係する素材屋が多く出店している。広場にはプレゼーピオが飾られ、ちいさなメリーゴランドも設置されるなど、子どもを楽しませる要素を数多く備え、さながらフェスタのようである。シルバニアファミリーなどの小物が大好きだった私は、プレゼーピオにまつわる小物の数々に目を奪われ、幾度となく買い集めたい気持ちを押さえつけた。何より飾る場所がない。

 その気持ちを、教会の個性がよくでているプレゼーピオ探しに切り替えた。私の住む部屋の家主であるマリナも同じように、小物好きかわいいもの大好きの性格だったこともあり、出会いたての親睦も兼ねて、二人でよく教会めぐりをしていた。有名どころよりも、集落の人々が赴くちいさな教会などのほうが、かわいらしい飾り方をしているものなのだ。

 それでも、いつか自分の手でプレゼーピオをつくってみたいと思っている。それは、何よりも新約聖書の中で、プレゼーピオが題材としているキリスト誕生のシーンが一番好きだからに他ならない。

 ところで、冒頭で触れておきながらそのままにしていたものがある。

 イタリアでは、ナターレの時期に欠かせないお菓子がある。イタリアでも地方によって食べられるお菓子の形態は変わっていくようだが、大抵はパネットーネとパンドーロだ。日本でいう、パウンドケーキのようなものである。日本でも輸入店などに行けばちいさい箱に入れられたそれらを見ることができるが、本場の重量は1キロくらいのヘビー級である。無論、一人で三日をかけても食べきれる代物ではない。

 パネットーネはケーキの中にドライフルーツやナッツが練りこんであり、パンドーロはパウンドケーキの基本素材に粉砂糖を振りかけただけのタイプだ。パネットーネは食感が、ケーキというよりパンに近い。大家のマリナいわく、パンドーロよりも、パネットーネのほうがナターレの伝統的なお菓子なのだそうだ。あとは好み次第である。私もマリナもパネットーネのほうが好きだが、娘のエレナはパンドーロ派だ。

 イタリアの各家庭に欠かせない上、市販のパネットーネとパンドーロは単価が安い。ヘビー級のケーキだが、10ユーロを切るのが普通だ。そして、正月が過ぎれば3ユーロ以下で叩き売られることもあるのだからすごいものである。

 ナターレイヴとナターレの日中は基本的として、家族や親戚とともに過ごす。マリナの好意で、ナターレの日、彼女の親戚の昼食会に招待されたときは、前菜、ラザニア、肉料理とイタリア式のフルコースであった。もちろん最後は、重量級の定番ケーキとお菓子である。ナターレの頃は親戚のご家庭も、マリナの家もパネットーネとパンドーロの大きな箱が積まれていた。ナターレが過ぎた頃から、毎日せっせと朝ご飯にパンドーロやパネットーネを消化するのである。ちなみに、味は大味で甘ったるいので、濃いコーヒーとともにいただく他は、あまりおすすめできる食べ物ではない。

 一方、大晦日の夜は、日本と似たような風習がある。新年のカウントダウンを待ちながら食べる一品があるのだ。それは、レンティッケという豆である。日本語では、レンズマメだ。レンズマメは、イタリアで硬貨を意味し、たくさん食べることでお金持ちになることを願う、ということらしい。レンズマメと燻製肉のシンプルな煮込みものは、しつこくなくとてもおいしかった。

 ナターレから三が日あたりまでは、各親戚めぐり友人の食事会めぐりなど食事会が目白押しになる。どれの食事会も半端でなく量が多いので、この時期は食事が一大仕事だ。私もマリナの友人の食事会を一緒にめぐったが、不思議とどの家庭もラザニアに肉・魚料理、ドルチェと続いていた。そして、皆一様に食べて食べて攻撃をするのである。無下にはできず、がんばって私も必死に食べたが……特にチーズとソースの濃さとオリーブオイルを多用するラザニアは日本人の胃腸には重すぎる。イタリアに来てはじめての食地獄に身体がついていけず、すっかり胃腸を弱めてしまった。美食の国イタリアではあるが、濃厚なチーズとオリーブオイルをふんだんに使うレシピには気をつけようと、心に誓ったものである。


◆次回【エッセイ03(2月前半編)】は、2月更新予定。タイトルは「ローマ人の諦観について(仮)」です。

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by gosuiro | 2011-01-31 23:13 | ROMA留学エッセイ | Comments(0)


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