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【03ROMA留学エッセイ2010-02a】★イタリアと日本における、物欲と飽和
 ブログを開始前から書きためていた、イタリア留学エッセイの第三回目。前回のエッセイ、イタリア的クリスマスと正月の過ごし方は、コチラより、リンクを飛んでお楽しみいただければ幸いです。
 今回は予定を変更して、イタリアのバーゲンの話と、日本の物に溢れた飽和社会とローマの比較を先にUPしています。読まれる方々にも、イタリアと日本の生活文化の相違が学べるよう、今後も推敲を重ねる次第です。(元々、欧州比較文化と西洋哲学を体得するため留学しました。)それでは、下記よりどうぞ……。
 ※2月14日付で、加筆修正いたしました。


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  冬の大セール期間が過ぎると、カーニバルの時期まで街はまた日常を取り戻す。お世辞にも清潔な街といいがたいローマでは、相変わらずのあちこちで派手なクラクションが鳴り響き、交通量と喧騒が比例したままだ。そのわりに、観光のオフシーズンであるせいか、中心部は比較的落ち着いている。日中の中心部を散歩するならば、この時期がもってこいだ。

 路地を歩いていると、まだサルディという文字をショーウインドーに残したままのショップがちらほらある。サルディ(Saldi)はイタリア語でセール(バーゲン)という意味だ。ちなみに、イタリアでよく見られる表示でスコント(Sconto)と、オッフェルタ(Offerta)がある。スコントは、イタリア語で割引・ディスカウント。オッフェルテは、提供という意味だ。安く提供するときに使われ、複数形だと語尾が変化し、オッフェルテ(Offerte)となる。

 イタリアでは、夏と冬に大規模なセール期間が設けられている。開始日時は大方決まっており、その日を境に一斉にセールがはじまる。セール開始日の中心部は、多くの在住者で溢れるのだ。セールのはじまる前に、欲しい服などに目星をつけてセールがはじまる日を待つ、というスタイルはイタリア人でも日本人でもあまりかわりはない。

 私はというと、この冬はガーディガンとジャケット、着心地の良さそうなワンピースやブーツなどを購入した。一目惚れして買ったというよりは、必要にかられて購入したといっていい。2010年冬は、ローマでも二十数年ぶりに雪が降るほど寒かったのだ。数年前、大学の卒業旅行で冬にローマを訪れた際は、比較的暖かかった。その記憶があって、今回の留学では防寒グッズを大して持ちこんできていなかった。読みがはずれたわけである。

 しかし、この服選びが思いのほか難航した。服のサイズが、どれも私の体型に大きすぎたのだ。身長も小柄で、日本では七号の服を着ていたような人間のサイズを、イタリアで見つけることは難しいようだ。たとえば、ガーディガンならば多少大きくても気にならないが、ジャケットは身体に見合っていないとだらけた感じになってしまう。

 散々歩いて探してみたが、気に入ったデザインで体型にあうものはなかったり、あっても名の知れたブランドもので私には値段が高すぎた。探し疲れて諦めの境地でいたところ、購入に至った薄手のジャケットに出会ったのである。私の体型からは一サイズ大きかったものの、薄手なのと中に服を着込めば見栄えも悪くなくなるだろうと算段して買った。紺のシンプルなものだが、レースの使いかたに小技がきいていて、フォーマルにもカジュアルにもあわせられる感じである。

 一方、ワンピースはたまたま体型にあっていたものが安く売られていたので購入した。ゆるい感じに着るタイプのものだったから違和感はない。本当は、欲しいワンピースが他にも多々あった。イタリアの服のデザインは、派手なものは派手、シンプルなものはシンプルとはっきりしているものが大多数だ。とはいえ、フェミニンでレースや数種の生地をあわせたワンピースもいくつかの店で見かけていた。ディスプレイに飾られたそれらに興味は向いたものの、端っから購入は諦めていた。

 デザインが自分にあわないからではない。スカート丈が自分にあわないのだ。背が高い人であれば、ディスプレイ同様の雰囲気に仕上がるだろうが、背が低いとやぼったい印象になる。スカートは、丈が膝少し上になるか、膝より下になってしまうかは、着る人の身長で決まる。体重は増減できても身長だけは無理だ。コンプレックスを刺激されるだけなので、一着買ったらそれでことを終えた。その点、ブーツ探しはサイズも多くあったおかげで、簡単にお気に入りのものも見つけられたのである。

 セールで購入したというよりは、イタリアに来て目立って購入したのはこのサルディの時期だけだ。それ以上に、普段は大してお金を使うことがない。食料品や勉強道具といった必須消耗品を買う程度で、大きな支払いといえば家賃と定期券くらいだろう。外食といっても、ランチはおいしくて安いというところを知っているし、それこそ料理上手の家主マリナが時々つくってくれるご飯のほうがおいしいくらいだ。

 つまり、基本的にお金を使わない生活なのである。服はまずサイズがあわないところからはじまって、留学生身分として物は増やしたくないという気持ちもあるし、好きな読書もイタリア語が慣れない身としては、日本語でなければ意味がない。イタリア語での読書は、逆にストレスをもよおす。だからといって、ローマの本屋で日本語だけの小説など見つけたことはない。趣味の旅行も、今は勉強が優先でそれどころではないし、イタリア語の音楽CDを探してはいるものの、案外英語曲のほうが多かったりする。こうなると、もはや本当に買うものがないのである。

 一方、物欲が制限されてしまうと、自分がいかに日本で購入過多になっていたのかがよくわかる。化粧品やサプリメントにしてもそうだ。私は肌が弱いこともあって、肌が荒れるといろいろな美容液を試してみたり、毎日コラーゲンを飲んだりなどしてお金をつぎ込んでいた。しかしローマに来て、それらが気軽に買えない状況になった。

 そしてわかったのだ。美容液にしてもコラーゲンにしても、与えたところで私の肌に効果はあまりないのだということである。肌が荒れるのは単純に睡眠不足からだ。睡眠さえきちんととっていれば、肌荒れにならないしデキモノもすぐ治る。

 日本は本当にモノに溢れている。しかも機能的でデザインも案外いい。イタリアでも、日本製品はシャープペンシルひとつとっても高級品だ。日本では100円以下のものが、300円くらいする。日本から持ってきた便利品で、マリナに羨ましがられたことはたくさんある。

 それこそ、一時帰国のする際の、日本への土産物探しは本当に難航した。イタリア土産といえば、お菓子や食品が主になってくるが、イタリアの美味しい食品はほとんど、すでに日本に輸入されている。日本でも買えるものを土産物にするのはむなしい。それ以上に、外国の食品でも、探せばたいがい日本国内で見つかるというのがすごい。イタリアでは絶対に無理なことだ。イタリアでも通信販売はあるようだが、アフリカ以下と称される郵便事情で手を出すのに勇気がいる。

 日本はモノに溢れすぎだというが、私は消費大国日本でいいと思う。購買欲は経済を活性化させるものだし、この消費文化がなければ、戦後これほどまでに日本が経済大国にのし上がることはできなかったはずだ。

 外国に一度住めばわかる。日本ほど便利で機能的なもので、デザインの種類の豊富な国はない。モノだけでなく、サービスも驚くほど合理的だ。人情味に欠けてきたのは残念な点だが、全体的には誇るべき文化といえる。日本のものは、世界の中でもレベルがすこぶる高いのだ。優れているのである。

 環境関係については、消費過多なのが悪いのではない。発展に消費が欠かせない。問題は、消費された後でどう再利用するかである。環境保護やゴミ問題に関しては、ローマのほうがひどい有様なのだから、日本は消費大国のわりによくがんばっているほうだと思う。

 日本の良い品を、海外に広める活動をもっとすればいいのにと、ローマに住んで常日頃思う。海外の良い品を取り入れるだけでなく、小物や雑貨などジャパン的(サムライや浮世絵のような、外国人が喜ぶもの)ではないが、機能的で物持ちのいい雑貨も海外に輸出すべきだ。案外、かわいいデザインのものが好きな彼らだ。なおかつその製品が使い勝手良いとわかれば、すぐ飛びつくはずだ。

 それに、日本はゴミ処理システム(焼却場など)に関して、とても高度な技術を持っていると聞く。万年南イタリアはゴミ問題にあえいでおり、市民レベルでゴミの分別をしていても、収集側が一緒くたに廃棄しているというとんでもない話も聞いたことがある。廃棄物処理システムの提供を海外に売り込むのも良いアイディアなのではないかと、私は思うのだ。

 この間、地下鉄が発行している新聞のアンケートに行きたい国ベスト5が記されていた。なんと、日本は第3位。欧州で寿司などの日本料理がヘルシー料理として大変人気があることも、一役買っているのだろう。しかし、日本の良さはそれだけではない。実際に彼らが日本に旅行してきて、様々な商品が一同に集まるデパートなどを見たら、きっと目を輝かせるに違いないのだ。


◆次回【エッセイ04(2月後半)】は2月末更新予定。タイトルは「ローマ人の諦観と、カーニバルについて」です。

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by gosuiro | 2011-02-12 02:47 | ROMA留学エッセイ | Comments(0)


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