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【13ROMA留学エッセイ2010-07a】 姉弟とめぐる南イタリア旅行・プロローグ「ローマ編」
 イタリア留学エッセイの第13回目です。前回のエッセイ「国際結婚のさまざまなかたち」は、コチラ。今回から長々、南イタリア旅行の話がはじまります。今回はプーリア・バジリカータに行く前に、「ローマ観光よちよち歩き編」です(食事ネタも多いので、後日場所などの補足もします~)。下記よりどうぞ。
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 会社勤めの弟が、一週間の休暇を擁してイタリア観光にやってきた。ローマに留学している私が、「ローマとイタリア語をある程度知った姉と、南イタリアに行かないか。こんな機会は早々ないぞ」と、再三口説き彼をその気にさせたのがはじまりだ。

 彼はすでに一度、単独旅行でイタリアを訪ねている。しかし、ミラノやヴェネチアといった北部のみの観光だった。イタリアの場合、北と南では装いがまるで違う。気持ち北イタリアを知っている彼は、南イタリアとて北とあまり変わらないだろうという悠長な構えをしていたはずだ。

 しかし、南イタリア、とりわけローマという街の規模はでかい。第一、内包する歴史の長さが他の街とあまりにも違う。その昔、私もはじめてイタリアを訪れたときは、添乗員付きのイタリア縦断バス旅行だったわけだが、ミラノからじょじょに南下して、ローマに来たときの衝撃は今も忘れていない。それまでは中世の街並みや穏やかな風景が続いていたのに、ローマという街に着いた瞬間、洪水のようにすべての年代の建造物や文化が押し寄せてきたのだ。古代の遺跡の横に中世の建築物が寄り添い、その隣に近代・現代建築の建物がどんと構えてある。車や人はやかましいし、まさに雑然という言葉がよく似合った。ここまで歴史の尺度が狂っている都市を見たことがなかったのだ。

 あの感覚がこの胸に残っていなければ、ローマくんだりまで留学することはなかっただろう。いろいろな国や街を訪れたことはあるが、これほどまで惹きつけ一度住んでみたいと思わせる街は今のところローマだけだ。なにより、この街はいろんなものや物事がありすぎて、とても疲れる。つまり、良い言い方をすれば「飽きることがない」街なのだ。

 さて、そんな感覚を味あわせてくれるローマ。初訪問の弟に、少ない観光日数(三日間!)で、何を見せてやろうかと散々考えた。が、やはり一日はヴァチカン市国観光中心、もう一日はコロッセオとフォロロマーノ、パランティーノの丘を中心に動くことにした。

 一日の観光に、メインどころはふたつ入れない(観光を詰め込まない)ことが、ローマの鉄則である。なぜなら、チケットを手に入れるまで長蛇の列を覚悟しなければならないこと(特に夏はそうだ)、そしてローマは閉館時間がひじょうにあいまいなところがあるのと、常に何が起こるかわからない、つまり予定通り物事が進まないからだ(たとえば、地下鉄やバスが突然一日動かなくなる、ストライキが起こる、何かの機械が壊れて入館できないその他いろいろ、信じられないことが普通に起こるのがローマである)。

 だが、観光でもトレヴィの泉やパンテオンなどは無料であるし、夜空の下ライトアップされたほうが綺麗であったりもするので、そうした有名建造物は散策のついでに見物というかたちにした。

 そして、観光当日である。その日はアフリカからの熱波(シロッコ)で、信じられないほど暑かった。マリナ以下ローマに住む人同様に、日差しの強い時間は屋内でじっとしている生活を送っていた私からすれば、この暑さと痛くほどの太陽光線の中で外出するのははっきり言って自殺行為だったのだが、弟のために付き添いをしなければならない。現地のケータイを持たせて「一人で行って来い!」もできたのが、ローマに不案内でかつ微妙に英語が通じない(そして、イタリア語は英語経由で文字や発音を推測しにくい)街でもあるため、多少イタリア語のわかる人間がついていったほうが無難だった。なにより、私は日本語のガイドブックに載っていない安くておいしい飲食店などを知っている。

 午前中はヴァチカンのミュージアムに行かなければならないということで、長蛇の列に参加した。思ったよりもスムーズに入館でき(といっても、一時間半は並んだ)、久しぶりに館内の膨大な鑑賞物をかけ足で観回った。私が一番好きな絵画が、この美術館の中にある。ラファエロの『アテネの学堂』だ。そこだけは弟を引きとめてからじっくり観て、後はこれでもかというくらい壮大で有名なシスティーナ大聖堂を鑑賞した。

 弟はこの時点で、「観るものがたくさんありすぎて、しかもそれも全部がすごすぎて頭が混乱してくる」と言っていた。確かに、古代の大理石像が三十三間堂の観音以上の量でごろごろとそびえ、何本もの大廊下には隙間ない絵画や彫刻やその他もろもろ、荘厳というより賑やかすぎて脳が疲れるのも無理はない。情報量の多さに眩暈がしてくるほどで、鑑賞に相当の覚悟が必要なのだ。私は、弟と訪れるまで、住んでから一度もこのヴァチカンミュージアムに入館していなかった。その覚悟ができなかったからである。

 しかし、ヴァチカン市国観光は終わらない。退館の後、すぐ大聖堂のクーポラとその上に昇る列に移った。大聖堂の天辺は有料だが、そこから観れるパノラマは格別なのだ。ヴァチカン市国から見るローマ中心部の全景が眺められるのは大変貴重で、暑い中また我慢して列に並んだ。天辺にあがるのは、日本の城の天守閣と似たようなもので、大体が徒歩になる。しかし道のりは天守閣のそれの3倍以上だ。汗だくになりながら延々と昇ったかいのある景色はやはり素晴らしく、大聖堂の中を高いところから見下ろすクーポラ内部も装飾が美しかった。

 弟をたくさん圧倒させて、最後は大聖堂の鑑賞である。あまりに壮大すぎて最早なんと言えばいいのかわからない。写真を撮ろうにも収まるわけがない、何か無力さまで感じてしまう巨大な建造物である。弟は完全に圧倒されていた。私も疲れのあまり空笑いするばかりだ。いつ来ても、デカすぎてコメントの仕様がない大聖堂なのである。私がはじめて訪れた際は、連れていた母とこう話していた。

 「これを観たら、カトリックを信仰する気になるわ。だって人が造ったと思えないもん。信仰ってすごい」。今回、弟が言った言葉は「いろんなドォウモ観てきたけど、これ観たら他は全部ちゃっちく感じる」。その感想には、ひじょうに同感できる。

 ところで、この大聖堂に有名なミケランジェロの『ピエタ』がある。私はいつもこの大聖堂に向かうとき、まずこのピエタを目指す。ピエタを観に大聖堂に入るといっても過言ではない。一番好きな彫刻だ。この像の聖母は、実に完璧な女だと思う。キリスト教信者の皆様には申し訳ないが、私好みの色気も感じるし、母性も備えて一番しびれるマリア様なのである。

 さて、暑さと建造物と鑑賞物のすごさに頭も身体も打ちのめされたところで、一度ステイ先のマリナ宅へ戻る。帰りながら、切り売りのピッツァと、ティラミス、そしてジェラート屋でグラニータを味わう。中でも世界で有名なティラミスの店が家のすぐ近くにあり、甘党の弟に教えないわけがなくカフェを楽しんだ。彼は本場ティラミスのおいしさに本気で感動したらしく、後日持ち帰りのティラミスを500gも買って食べていた。ティラミスを日本に持って帰りたいとうなっていたほどだ。一方グラニータは私のお気に入りで、涼を得るためにジェラート屋へ立ち寄った。カキ氷をすっかりシロップに浸した、ジェラートとカキ氷の間の子というべきだろうか。ジェラートよりさっぱりしていて夏にあう。

 この日はこれでおしまい……というわけではない。ローマの夏の夜は長い。21時まで陽が沈むことはなく、深夜まで野外フェスタが行われている。つまり、観光に打ってつけなのだ。

 涼しい家で、在宅中のマリナと異文化交流を楽しんだ後で、夕食へでかけた。徒歩圏内のピッツェリアは生地が薄くてとてもおいしいマリナが薦めていたこともあり、ならばそこで本場ローマのピッツァを食べよう! ということになったのだ。

 ローマのピッツァはクリスピー状で、手にして持ち上げても生地がうなだれることはない。ピンとはったままだ。パン状で薄くもちもちなのは、ナポリのピッツァ。どちらが好きかは、好み次第である。私はどちらかというと、ローマタイプが好きである。

 また、ピッツァにも定番のトマトソースとチーズが基盤になっているものと、薄いチーズだけを先に乗せて焼き上げ、さらに生の具材を乗せるというピッツァビアンコというものがある。ルッコラや生ハムなど、具を一緒に焼かないほうがおいしいピッツァはこのタイプで提供される。逆に多くの具材を食べたいときは、クワットロスタジョーネ(四つの四季という意味)や、カプリチョーザを頼べばいい。

 弟はカプリチョーザ、私は生えびのピッツァビアンコを頼んだ。どちらも日本で提供されれば驚くほど大きい代物だが、一人で一枚ぺろりと食べられる生地の薄さである。特に、ここのピッツァはローマでも相当に生地が薄く食べやすい。日本でピッツァビアンコはなかなかお目にかかれないものだったので、弟に見せたかったというのもあった。

 おいしいピッツァで腹ごしらえをして、夜の観光がはじまった。まずはバスに乗り、トレヴィの泉を目指す。夏のハイシーズンということで、膨大な観光客に人酔いを起こしつつ、ライトアップの美しさと水の音にほっとする。弟はおまじないのひとつである、泉にコインを投げるという行為をしたりと楽しんでいた。私もはじめてローマを訪れるたびにしたものだ。もちろん、ローマに住んでみたいという願いをこめて。

 人気を避けウィンドーショッピングをしながら、次はポポロ広場へ。双子の教会とカラヴァッジョの絵画が置かれる教会を鑑賞して、一路下町の風情が残るトラステーヴェレに向かう。かなりの距離を歩くことになるので、途中巨大なパンテオンを横目にカフェをしたりして到着地まで進んだ。深夜12時半のことである。

 夜中であるのに、下町を目指したのには意味がある。ローマは夏、トラステーヴェレ近くを流れるテヴェレ川沿いでフェスタを開催するのだ。特設のカフェや店が立ち並び、そのどれもがムード満点で本格的だ。なんせソファやテレビなどが野外に関係なく設置されている。観光客というより、地元の人が多い印象だが、そうしたところのほうが危険ではないし、よりローマを身近に感じられるし……何より、川沿いの雰囲気抜群の特設カフェで酒を飲みながら夕涼みできるというのは、格別の贅沢ではないか。しかも、料金も手ごろだ。

 疲れが最高潮にきていたらしい弟も、フェスタの雰囲気に気力を復活させたようだった。お酒を飲みながら、翌日以降のプランを話しつつ、夜のローマに酔いしれる。時刻は深夜2時を回っていた。

 ローマはすぐ起きるストライキやいつまで経ってもこないバス、時刻表などありはしない地下鉄やトラムなど、問題点はたくさんある。しかし、深夜でもバスが通っているという数少ない利点もあった。土地に慣れていなかったり女性一人で活用することはあまりおすすめできないが、帰宅する足があるというのはとても便利である(そして、それだけローマの人たちが宵っ張りであるということなのだろう)。私たちも、この夜は深夜バスを活用した。珍しくスムーズに乗り換えもすませ、最短時間の30分程度で帰宅することができた。何より、深夜は車の渋滞がまったくないから最高なのである。


◆続きの【エッセイ13-2(7月前半編)】は、随時更新予定。今回のグルメネタ関係の話は、続きエッセイをUPする前に写真とともに補足します……こんなに食べ物の話をしていたとは(苦笑)

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by gosuiro | 2011-07-10 00:57 | ROMA留学エッセイ | Comments(0)


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