【14ROMA留学エッセイ2010-07e】 パプリカを使う夏の料理と食材
 イタリア留学エッセイ第14回目、今回は旅行後ローマの生活に戻ってからの料理づくりと休息です。前回エッセイ「姉弟とめぐる南東イタリア旅行」は、初章ローマ編コチラ、2章ローマ編2コチラ。3章マテーラ編コチラ。4章アルベロベッロ・バーリ・ナポリ編コチラです。
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 七月に入った頃から、イタリア人の知り合いが皆一様に、今年のヴァカンスはどこに行くのか、と、訊いてくるようになった。さすがに毎日顔を合わすマリナから訊かれることはないが、同居している彼女たちもヴァカンスについていくらか算段をしているようだ。マリナは親友の別荘がある避暑地でのんびりするそうで、エレナはサルディーニャ島というシチリアで二番目に大きい島(リゾート地化している)と、友人の結婚式に招待されてルーマニアに行くらしいという話を聞いた。マリナのほうは、今年は静かに過ごすと決めているようだ。

 私はというと、七月前半に弟が夏休暇でローマを訪れたこともあり、早い段階でヴァカンスを終えていた。プーリア州・バジリカータ州への旅行も、たったの二泊三日だ。しかも、信じられないほどの猛暑が重なり、休息旅行というよりは逆に夏バテしてローマに戻ってきたというのが本音であった。そして、私たちが南東イタリア観光を終えたと同時にうだる暑さが引いたのだから憎いものである。

 スタミナ切れから回復がままならないまま、私は日光を避けて生活をしていた。八月前のローマは、ひじょうに心地よい天気が続いていた。猛威を振るっていたアフリカからの熱波(シロッコ)は影を潜め、日中は心地よい風が通り、夜は掛け布団がないと少し寒いくらいである。気温も、新聞によれば最高気温28℃、最低気温15℃前後。ローマの本来の夏がこのような気候ならば、日本より格段に過ごし易いし、エアコンや扇風機などという冷気をつくる代物が必要ないことも納得できる。

 さて、この時期が赤や黄の鮮やかな野菜、パプリカの季節にあたるらしい。それというのも、一年近くローマに住んでいて、パプリカの値札が一番安くなったのを見たからだ。

 イタリアは、ヨーロッパでも気候に恵まれているところが多い国である。四季もわりにはっきりしている。私の住んでいるローマは……というより、イタリア南部はヨーロッパの中でも果物や野菜が全体的に安い地域だと思う。パプリカが高い時期といっても、一キロ2.5ユーロ前後。なんせ「キロ」である。その上、ひとつのパプリカの大きさが、日本で売られているそれの2倍以上ある。日本のパプリカは一個100円程度するわけだから……ローマで日本並のかわいらしい小ぶりのパプリカを一キロ2.5ユーロで100円分買うとすると、おそらく4個は軽く買えるだろう。100円でパプリカ4個。おおざっぱな計算になるが、そのくらいだと思う。

 そして一番安い時期の、一番安い場所では一キロ99セントと書いてあった。つまり、日本の場合で換算すると、100円で7個以上は余裕で買えることになるのではないだろうか。日本人の感覚からすると、ありえないほど安いといえる。しかしその分、かたちは無骨だし、熟しすぎていたり、腐っていたりカビがはえていたりすることも珍しくない。スーパーでも時折そうしたものをお目にかかるのだから、野菜や果物の扱いはおおざっぱ、要は食べられればいいという感覚なのである。質の悪いものを引き当てた場合は、引き当てた人が悪い。スーパーや八百屋のせいにはならない(言い争うだけ疲れるだけだ)。逆においしいものにあたれば、それにこしたことはないのである。

 それゆえに、果物や野菜を選ぶときは、それなりに鮮度を見極める必要がある。ともあれ、どれも旬のものは上記のパプリカ並に格安だ。高いといっても日本で買う野菜や果物よりは安い。腐っていたものをつかまされたところで、運がなかった程度でおさめることもできる。むしろ、そのように考えることが、ローマで快適に暮らす処世術だろう。

 さて、ちょうどパプリカにハマっていた私は、パプリカの激安さに感激し、早速近所でよく通っているフルッテリア(八百屋みたいなもの)で、大量に買いあさった。少しよれていたり黒ずんでいたりするのはご愛嬌だ。個人的に赤のパプリカが好きなので、色を統一してみる。ちなみに、ローマのパプリカは赤も黄色も信じられないほど発色がよく、しかも生で食べても甘みがあっておいしい。

 このたびは、マリナから教えてもらったパプリカのマリネをつくることにしていた。

 つくりかたは簡単だ。白ワインと白ワインビネガーを2対1の割合で鍋に注ぎ、沸騰させる。その中に、大ぶりに切ったパプリカ(ひとつが、人差し指と中指をあわせたくらい)を投入して、20分強ぐつぐつ煮込む。やわらかくなったパプリカの山は、水にさらすことなく取り出し、テーブルにひとつひとつ並べて乾かすのである。面倒だが、ここで水を切っておかなければ、後で加えるソースが浸透せずおいしいマリネにはならない。

 味付けのソースは、にんにくとイタリアンパセリとオリーヴオイルしか使わない。にんにく一個分(パプリカ1キロにつき…好み次第)を、みじん切りにして、同じくみじん切りにしたパセリとまぜる。包丁でさらに細かくしながらあわせると風味がよりよくなる。ちなみにイタリアには、メッザルーナと呼ばれる両手で使える包丁が存在する。ソースをつくるために(食材をみじん切りにするために)使う特別な包丁だ。かたちが、半月に似ていることからメッザ・ルーナ(Mezza luna)という。Mezzaは半分、Lunaは月という意味だ。

 話を戻そう。刻んであわせたパセリとにんにくはちいさな容器にいれる。その中にオリーヴのエキストラヴァージンオイルを適量いれ、馴染むようにまぜあわせる。ソースはいたってシンプルだ。おおきいボウルに、なんとなく乾いたパプリカとソースをあわせれば完成だ。私はパセリの代わりにバジルを使っている。

 パプリカのマリネは保存がきくし(むしろ日にちを置いたほうがおいしい)、料理の付け合せや前菜にも堂々と使える。生のサラダの味付けとして加えてもおいしい。何より、なんともイタリアらしい料理ではないか。日本でこれと同じものをつくるとすれば、やれないことはないが、コスト面は数倍かかるだろう。

 日本でならば、私は絶対にパプリカのマリネをつくらない。この料理より、おいしい日本料理は山ほどあるからだ。無理ぐりつくる気にはなれない。ローマに住んで好きになったパプリカ(それまで、パプリカは大嫌いであった)は、ローマに住んでいるから好きなのだと思う。

 かくして、熟したパプリカを大量に買ってしまったことから、大量のパプリカのマリネができあがった。にんにくを細かくする作業だけがとても面倒なので……今回はすり器で全部摩り下ろすという荒業を試みた。日本であれば、刺身の台になる大根のつまをつくる面であり、イタリアでいうと堅いチーズを摺るところである。出来栄えは上々だったので、これからこの方法を使おうと思う。時間の短縮になるし、にんにくのせいで指がヒリヒリ薄く腫れることもない。

 とはいえ、都市の時間自体がゆったり動いているのがローマである。私の母方の故郷、沖縄北部とその雰囲気がよく似ている。元々やれることが限られているわけだから、急いで時間を短縮させようが優雅に使おうが、あまり関係がないのだ。急いだところで暇が増えるだけである(イタリア語の勉強すればいいのだが、語学勉強は好きではないので避けたい私がいる……)。のんびりすると決めたこの日は、ローマの涼風を感じながら、インターネットで日本の近況を楽しんでいた。そして毎度ながら、インターネットで簡単に日本の情報を得られる喜びを噛み締めるのである。


◆【エッセイ15(8月前半編)】は、8月更新予定。タイトルは「テルメと日帰りヴァカンス」です。
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by gosuiro | 2011-08-12 23:19 | ROMA留学エッセイ | Comments(0)


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