【15ROMA留学エッセイ2010-08a】 ローマで体験! テルメとヴァカンス、前編
 イタリア留学エッセイ第15回目、今回は夏休み総括、イタリアの人はこうやって楽しむんだよー的な、テルメとヴァカンス体験のお話です。前半はテルメについてです。前回エッセイ「パプリカを使う夏の料理と食材は」のリンクはコチラです。
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 夏の強い日差しを避けて、学校と散歩以外はすっかり家に篭る怠惰な生活を送っていた。クーラーなどイタリアの家庭には浸透してはいない。野外に出て汗だくになって戻ってきたところで、家に冷風はない。水浴びする以外、なかなか熱さは引いてくれないのだ。結論からいえば、家でじっとしておいたほうがいいのである。そんな理由から家に籠もる私を見かねてか、ある日の午後「テルメ行くけど、ついてくる? 」と、マリナが誘いの言葉をかけてくれた。

 テルメ(Terme)というのは、日本で言う温泉にあたる。浴場と言い換えても良いのかもしれない。有名なローマの遺跡、カラカッラ浴場(イタリア語で、テルメ・ディ・カラカッラという)など、古代ローマから親しまれるイタリアの娯楽のひとつである。日本でも大の温泉好きだった私は、喜んでふたつ返事をしたわけだ。なんせ、ローマ近郊にある大抵のテルメは車が必要になるような場所ばかりなのである。

 彼女が誘ってくれる前にも、何度からテルメを体験してみたいとマリナに話していた。しかし、彼女いわく、どこも車がなければと行きにくいような不便なところばかりだという返事だった。癒されに行くために、本数の少ない列車やバスを駆使して往復するのはナンセンスで、自力で行くのは諦めていた。そんな私の気持ちを、マリナはちゃんと察してくれたのである。本当にたまに前世は日本人だったに違いないと思うほど、気遣い屋なのである。

 当日は、早朝から支度して地下鉄、列車と順に乗りついだ。マリナの友人が待つ最寄り駅まで向かい、合流後マリナの友人が運転する車で山間のほうまで移動する。一時間以上車を走らせていたのだから、すで小旅行の装いだ。ローマ近郊にはいくつかテルメが存在するが、マリナが一番におすすめするテルメは自力では絶対に無理だと道中強く思ったものである。

 さて、テルメは日本語で「温泉・浴場」を意味するが、その内容は大きく異なる。日本のように身体を洗ったり裸で湯につかったりするものではない。まず、水着の着用が必須だ。そして大概は野外にあり、男女共同である。どちらかというと、プールと温泉の間のような感じだ。プールの水が温泉水で、水温は人肌より多少温かいといったほうがわかりやすいだろうか。その中でゆっくり浸かるというよりは、泳いで遊んだり、外にでて簡易ベッドで日光浴をして過ごすわけである。

 マリナがこよなく愛するテルメは、文字通りそんな感じだった。こじんまりとしていて、山と放牧地に囲まれ、かすかに硫黄臭がしていた。この臭いを嗅ぐと、温泉に来たという実感が増す。

 まずはおおざっぱなつくりをした更衣室で、テルメスタイルに着替えた。あらかじめ中に水着を着ていたから、あとは濡れてもいいようなキャミソールと短パンを履く。マリナたちは水着の上にワンピースを着ていた。皆六〇歳以上でいい体格をしているが、気にしない。水着を着なければテルメに入れないのだ。水着を着るときに、年齢と体型を気にするのは日本人くらいだろう。

 用意を済ませると、ロッカーを閉めて外へ出る。チケットを買う受付は、テラピーが受けられる棟にある。イタリアのテルメは、療養施設やエステ施設が兼ね備えられているのが基本だ。このテルメには、医者も勤務している。イタリア的娯楽のひとつではあるものの、日本のように気軽に行くスポットではないのである。

 支払いを済ませてテルメへ入場すると、そこにあったのは浴槽というより、日本人からいわせればプールそのものだった。メインは25メートルプールのような広さと深さを備えている。別途にひとつさらに深さがあって少し温度の高い浴槽……もはやプールと呼ぶことにする。プールがつまり二つある。それと、ウォーキング用のちいさなプールもあった。

 私たちは大プールを囲む簡易ベッドの一部分を押さえて、早速プールの中へはいった。プールにはいる際は、頭にキャップをかぶることが必須だ。思った通り、温泉水は人肌より少し低いくらいの温度に設定されている。泉質は乳白色で、触りは心地良い。プール化した温泉にはいるのは初めてで、マリナに連れられ泳ぎながら色々な説明を受ける。プールには打たせ湯のポイントも二カ所あり、ジェット水流でツボを刺激するコーナーも設けられていた。日本にいたとき以来の、肩や首、足腰をほぐす水流に、私は長いこと当たっていた。温泉の様式はまったく違うが、気持ちよいことに代わりはない。

 一時間ほど、日差しの強さも忘れつつプールを楽しむ。おなかが空いてきたと思ったら、昼食にちょうどいい時刻になっていた。この日は、風が強く涼しいこともあり、濡れた身体だとすぐに冷える。身体を拭いて短パンを履くと、マリナがとっておきのポイントに連れていってくれるという。昼食前に、そちらへ向かうことにした。

 とっておきのスポットは、テラピーを受ける施設内にあった。サウナである。日本にあるような木造式のものを想像していた私は、施設スタッフの開けた扉の向こうを訝しげに眺めていた。

 岩をくり貫いたような通路が下に続いていた。まるで洞窟だ。むっとする熱い湿気から、確かにサウナであることはわかる。マリナは笑顔で階段を降りる。続けて私も降りてもうひとつのドアを開けると、気持ちの良い熱気が身体にまとわりついた。まさしく、サウナである。しかし薄暗さと圧迫感はどう見ても洞窟だった。

「ここは、古代ローマから使われているサウナよ」

 私はそれを聞いて、目を丸くして驚いていた。古代ローマの文化をこよなく愛するマリナが、このテルメを気に入る最大の理由は、このサウナがあるからだろう。遺跡として浴場跡は散々見てきたが、実際に使用されているものを体験したのははじめてある。しかも、二千年前くらいに造られたものであろう。二千年。古代の文化に肌で実感できた感動と、現在も使用されているという驚きでマリナを見れば、彼女は満足そうに笑っていた。ここのテルメは本当にすごい。

 古代サウナの洞窟は長方形で、側面を掘ってつくられた長いすの反対側に源泉を流す堀がつくられていた。源泉はどうやら相当熱いようだ。そこからもうもうと湯気が立ち、天然のサウナをつくっていた。奥手には区切られたちいさな部屋があり、地上の空気と自然光を取り入れるための穴が空けられていた。入り口に近い反対側にも、涼む部屋が区切って設けられている。

 すべてが電気やガスを使わない、天然のものでつくられていた。古代からの技術でありながら、今も機能しており、とても自然で画期的であった。何気ないようでものすごく貴重な体験をしたことに、私は気持ちを高揚させてサウナを出る。今までは浴場遺跡といわれても、なかなかピンとこないものだったが、このサウナを体験して、古代ローマの人たちがどのようにして浴場施設を使い、楽しんでいたのかが本当によくわかったのである。体験は大切だ。

 さて、昼食は食事エリアに移動して、マリナたちがこぞって家から用意してきたお米のピラフやトマトのサラダ、たくさんの果物を味わった。どれもおいしかったが、野外で風が冷たかったこともあり、鳥肌が引かない昼食であった。皆気にしていないところを見たり、今までのマリナの服装や行動を考えると、日本人に比べてイタリアの人はまだ寒さに強いような気がする。一方、20℃をきった夜でも暑い暑いといっているのだから、暑さに弱いのかもしれない。第一、基本イタリア人は皆猫舌なのである。

 昼食後もプールにはいって楽しみ、16時頃テルメを後にした。途中ブラッチャーノという城があるちいさな街を観光する。そばにはブラッチャーノ湖という広い湖があり、高台からのんびりと眺めた。路地もかわいらしい。最近はこうした小さな街の路地に愛着を覚えている。


◆【エッセイ15(8月前半編その2)】は、9月前半更新予定。タイトルは「ローマで体験! テルメとヴァカンス、後編」です。
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by gosuiro | 2011-09-01 11:35 | ROMA留学エッセイ | Comments(7)
Commented at 2014-08-17 13:09 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by gosuiro at 2014-08-18 00:56
はじめまして。紹介したところはすごく良いテルメなんですが、基本的に車でしか行けない超穴場です。イタリア語か英語ができないとたどりつくのが大変かもしれません。

名前は、Terme di stigliano(テルメ・ ディ・スティリアーノ)。
住所は、Via Bagni di Stigliano 2, Canale Monteranoです。
公式サイト(伊語のみ)⇒ http://www.termedistigliano.it/

電車で行くのは途中まで可能。Roma Ostiense駅から、Manziana - Canale Monterano駅着。普通列車(Regionale)で、約1時間20分、3ユーロ。
そこからタクシーをつかまえて「Via Bagni di Stigliano 2」と住所を言うか、テルメ名を言って行くしかないと思います。バスもあった気がしますが、一日に2本あったかどうか……。Manzianaの駅でタクシーをつかまえられるかもあやしいです。タクシー代が高くなっても確実にたどりつきたいなら、ひとつ前のBracciano駅が湖に隣接した少し大きい街なので、タクシーは拾いやすいと思います。ただ、電車、道のルート、時刻などは完璧にご自身で調べてください。あのあたり路頭に迷うと森と野原なので危険です……。(下記に続きます)
Commented by gosuiro at 2014-08-18 00:56
レンタカーが借りれるのならば、ローマから近いので(2時間くらい?)勝手が一番良いと思います。ちなみに結婚式もできるくらいの雰囲気の良いホテルも併設しています。テルメは9時から17時くらいまで営業しているようです。
ブッキングコムというホテル予約サイト「Grand Hotel Terme di Stigliano」と検索してみればホテルもでてきます。日本語で書かれてありますし雰囲気はよりわかりやすいかもです……日本から旅行で向かうには相当ハイレベルなスポットですが(外国人はほぼいません)、興味があれば是非がんばって行ってみてください!
Commented at 2014-08-18 03:40 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by gosuiro at 2014-08-18 09:47
こちらこそ、ちょうどローマにいらしてレンタカーでフィレンツェなら通り道ですね!(ちょっと遠回りですが)
スペイン語ができて地図が見れれば、たぶん行けると思います。途中までは大きな道路をまっすぐなので……。無事たどりつけることを祈っています。Buon viaggio!!!
Commented at 2014-08-20 06:34 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by gosuiro at 2014-08-22 10:27
無事着いたようで何よりです。次回のお楽しみに……っていいですね! うらやましいかぎりです♪
料金所はbarの隣あたりにあった気がします。着替えはプールの下のところ。サウナあたりは別料金だったのかな? 私は友人に連れられて行ったので仕組みまでわかっていませんスイマセン……。

私は行ったのは7月と9月の平日だったので、そのあたりは空いているかも。でも、9月はかなり風が寒かったです。

またお暇なときに、当ブログへ遊びにきてください♪


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