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【22ROMA留学エッセイ2011-11b】イタリア的恋愛観について
 イタリア留学エッセイ第21回目は、マリナたちと生活して感じた「イタリア恋愛事情」についてのお話です。エレナさんについては、事情がかわったので後日またお話でも……前回のエッセイ「欧州から見た、日本人の印象」はコチラです。
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 マリナ宅で、彼女の友人夫妻(高齢のカップルだ)と夕食をともにしたときのことだ。彼らに「イタリア人の彼氏はつくらないのか」と訊かれた。女性は国を問わず、大多数が恋愛話を好んでいる。一方の私は、そこまで恋愛話が好きではなく、恋人がいなくて寂しいと思うようなタイプでもなかった。だから、日本にいたときと同様にとりわけて彼氏がほしいとイタリアで思ったことはなく、まして探していることもない。

 簡潔にNOと答えたところで、ご婦人から「イタリア人の男性は信用できない?」と、重ねて訊ねられた。これも返事はNOだ。とりわけて、イタリア人男性が信用できないというわけでもない。

 確かに、イタリア人男性の恋愛着火速度は速い。良いと思えば、アプローチもかなり早い。そして押しもものすごい強く強引だ。日本人女性は印象として、背は高くなく、肌がキレイで顔も比較的幼いという認識を一部でもたれているらしい。昨今日本文化の人気もあってか、日本人女性はイタリア人男性に比較的声をかけられやすいようだ。というか、私は散々声をかけられた。自慢しているわけではない。ナンパに心底うんざりして、マリナの家に長い間引き籠ってしまったこともある。

 第一、ノリよくいきなり口説いてきてスキンシップをはかられることに、日本人はあまり慣れていない。イタリアでそういう場面に出会った際、舞い上がる人もいれば、どう断ればいいのか悩む人もいるだろう。しかし、イタリア人男性の大概は本気でNOと嫌がれば手を引いてくれる(つまり、アプローチが嫌ならば、相手の気持ちを傷つけたとしても、全力でNOと言わなければやめてくれない。自分が後で傷つくだけだ)。ついで、スキンシップ過多な人は、男性だけでなく女性にも多い。ボディタッチには、下心というよりも国民性に近い部分がある。

 それに、イタリア人男性のすべてがこの調子というわけではない。男女でも友人関係は構築できるものだし、ある程度信頼できなければ友人関係は成り立たない。私も信頼できるイタリア人男性の友人を持っているのだら、それについてはイタリア人も日本人も関係ないのである。日本人男性でも、信頼のおけないタイプはごまんといる。

 同時に、恋愛観についても人それぞれだ。イタリアは情熱の国だというが、積極的な人もいれば奥手なタイプもいる。ただイタリアの人の場合、一度いいなと思えば、相手に想い伝えたい気持ちが抑えきれないのだろ
。後先のことを考えないで、とりあえず告白するから、物事の進展も早いのではないか。確かに恋愛は、相手へ気持ちを伝えなければはじまらない。日本人のように長い間躊躇したり遠まわしなアプローチをするよりも、玉砕覚悟で伝えるほうがうまくいくだろう。その素直さは見習うべきだ。

 その一方で、離婚するカップルもひじょうに多い。マリナもすでに離婚しているし、彼女の友人たちの離婚率はとても高い。マリナの話を聞いていると、離婚しそうな友人もいるというのである。彼女たちの会話を聞く中で、EXという言葉をよく耳にした。EXは、別れたパートナーのことである。子どもが巣立って、一人暮らししている離婚経験者のマンマたちが実に多いのだ。

 離婚経験者であるマリナは、その痛手からか、恋愛に関して異常に醒めている。いつもは空や鳥を見て、詩人のようなロマンチックな言葉を紡ぐ彼女が、恋愛に関してだけは一切のロマンを抱かない。「恋人をつくるにこしたことはないけれど、性格も吟味して本当に良い男かどうか見定めなければならない」と、私に幾度となく熱く諭すのである。そして、彼女はかならず続けてこう言うのだ。

「正しい結婚だと思って信じた相手でも、20数年経って裏切られるのは思わないものよ。人生はわからない。けどね、結局一人が一番気楽よ」

 彼女は元旦那の浮気が原因で別れているから、語る言葉のすべてが重い。人生の先輩が語るとても重い言葉なのである。そのうえ、マリナの性格は実に日本人的なのだから、元々身持ちのかたい恋愛感なのだろう。

 一方、国際的ダンサーの娘エレナはまったく逆の恋愛観だ。恋をしたら、その衝動を大切にする。恋愛は常に刺激的であってほしいのだそうだ。母親のマリナは、私も驚くほど日本人的な価値観をもっているが、エレナはまさに情熱の国らしい恋愛観である。

 結婚を望むことはなく、あくまで自分のために恋をする。自分の心が豊かになるような恋愛でなければ、その恋愛は自分にとって必要のないものだ、と、断言するのである。そんなエレナに対して、心は日本人のマリナが、陰で「恋愛ではなくて、結婚をそろそろ考えてほしい。いい年齢なんだから」といっているのを何度も聞いた。

 エレナは確かに35歳を越えているが、まったくそう見えないナチュラルな美しさを保っている。ゴテゴテに気合いを入れることの多いイタリアの女性にしては、驚くほどナチュラルな美しさと、細く均等のとれたしなやかな体型をしているのだ。ダンサーという職業上、感性や直感と心の豊かさは重要なポイントになるのだから、エレナはそのままでいいのではないかと思う。実際に、彼女の美しさを保たせているのは刺激的な恋に違いないことも、一緒に暮らしているのだからよく知っている。

 ついで、イタリアでは事実婚を選ぶカップルが本当に多い。事実婚にたいしての法律がしっかりしていることもあり、子どもができても籍を入れないカップルは多いものだ。だから、エレナのような考えは特別なものではない。マリナのほうが、イタリア人にしては古風すぎるような気がする、というのが私の感じているところだ。この親子の恋愛観の間をとるくらいがちょうどよいのだろう。

 ただ、事実婚という形態をとるカップルが多いせいなのか、イタリアは結婚率も低ければ出生率もひじょうに低い。事実婚を選ぶカップルは共働きであることが多いように感じるし、今のイタリアは、どちらかの職が良い環境でないかぎり、双方働いていなければ生活が大変だ。そこは日本も似たようなところだろう。経済的基盤がしっかりしていないと、子どもを育てることは難しい。パートナーである女性が働いている場合、ある程度落ちついた環境になったと判断しないかぎり子どもは望まないはずだ。

 事実、ローマでイタリア人カップルの赤ん坊を見ることは少ない。他の国とのハーフの子などは多く見かけることができるが、明らかにイタリア人同士の幼子であるとわかる子どもは少ないのである。日本も出生率が低いというが、イタリアはとりわけて少子高齢化社会といえるだろう。

 イタリアでの旅行先や教会めぐりの際には、結婚式をしているカップルを見たが、皆それなりに年齢が高かそうだった。見るからに若いカップルというのは、ほとんどいない。おそらく、早々と結婚というかたちをとるカップルは、その片方が異国籍であることが多いのだろう。結婚して配偶者ビザをとることが、一番手っとり早くその国に定住できる方法なのである。


◆【エッセイ(12月前半)】は、1月更新予定。タイトルは「蹂躙される土地」です。

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by gosuiro | 2012-01-17 23:31 | ROMA留学エッセイ | Comments(0)


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